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『脳力』は70歳を過ぎても伸びる - 長く仕事を続けると『経験知』が蓄積される –

久しぶりに倉敷を訪問し、現役研究者に「定点観測」の結果を報告してきました。現役研究者の手ごたえ、十分でした。自分がやっている仕事が彼らの役に立っているようで、とても嬉しく思いました。
そういえば、と改めて思ったのですが、「定点観測」の仕事を続けているうちに、報告内容が、だんだんと磨きがかかってきたのではないかと、思うようになりました。
ライバル企業の「定点観測」を続けて12年になります(2006年に始めました)。
12年も続けていると、ライバル企業の研究者の実力は、もうわかっています。研究者の性格もわかっています。研究部を構成する研究員も自然とわかるようになりました。研究に取り組む企業風土も理解できました。研究の流れも把握しています。世の中の開発ニーズの流れもわかりました。鉄鋼材料を使う企業の動向もわかっています。
テクニック的には、特許明細書を読むスピードが、とても速くなりました。12年前の3倍くらいのスピードで読めるようになったような気がします。徐々にスピードアップしてきたのでしょう。
そうした『経験知』が、自分自身を成長させてくれたなあ、と感じるようになりました。
でも、それは自分勝手な自己評価であり、客観性に欠けている、というのも事実です。
そんなことを思っているときに、同じことを感じている先輩に出逢いました。年1回、6月に集まる会のメンバーで、子会社の社長を務めた後、15年以上、翻訳の仕事を続けられていらっしゃる方です。フルタイムで週6日間、働いています。70歳を過ぎています。
「『経験知』が、溜まってきて、前よりもいい仕事ができるようになった」とおっしゃっていました。「鈴木さんと全く同じ意見です」とのお言葉もいただきました。
先輩は、翻訳の仕事を通じて、世の中全般の動きを学んでいます。アメリカの動き、ヨーロッパの動き、中国の動き、その他の国の動き。「翻訳」を通じて自動的に世界の動きを学ぶことができます。それら日常の仕事が仕事に深みを与えているといいます。
毎日の仕事の成果が『経験知』として蓄積され、長い時間をかけて『暗黙知』が形成されていったのではないでしょうか。
『経験知』の蓄積によって形成された『暗黙知』が『いい仕事』を作り、顧客に対して満足感を与える成果物になっているように思うのです。

仕事を通じて社会を常に見ていることが、経験知の蓄積に必要なことだと思います。先輩の場合は翻訳を通じて15年以上、世界の動向をみてきました。ワタクシの場合は特許明細書を通じて、12年間、世界の技術動向を見てきました。
ひとつのことを長く続けていると、70歳を過ぎても、『脳力』は向上します。
たしかに、年齢と共に身体の機能は衰えます。眼は悪くなり、シニアグラスをかけるようになりました。海馬の機能も衰え、数字の転記作業にミスが多くなりました。漢字の変換ミスも多くなりました。
でも、このような問題は、優秀なパートナーがいれば、全部解決します。優秀なパートナーとタッグを組んで仕事をすることができれば、70歳を過ぎても誰にも負けない創造的な仕事が、きちんと出来ると思います。

(M.S.)