トピックス

  • HOME
  • トピックス
  • 「勝つ」チーム ラグビーW杯・日本代表 - 平尾誠二の組織の作り方 –
  • 談話室

「勝つ」チーム ラグビーW杯・日本代表 - 平尾誠二の組織の作り方 –

ラグビー・ワールドカップ2019日本大会、日本チームが初めてベスト8に入りました。予選リーグでは、アイルランド、スコットランドの強豪を破り、4戦全勝でした。「強いNippon」を世界に印象付けました。

「日本チーム」の大きな特徴は、多国籍チームだということです。日本国籍になっている人もいますが、主要な外国人メンバーの出身地と所属チームを挙げると下記のとおりです。

Koo JIWON(韓国・ホンダ)、中島イシレリ(トンガ・神戸製鋼)、ヴァル アサエリ愛(トンガ・Panasonic)、トンプソン ルーク(ニュージーランド・近鉄)、ヴィンピー ファンデルヴァルト(南アフリカ・NTT)、ジェームス ムーア(オーストラリア・宗像)、リーチ マイケル(ニュージーランド・東芝)、ピーター ラブスカフニ(南アフリカ・クボタ)、アタアタ モエアキオラ(トンガ・神戸製鋼)、レメキ ロマノラバ(ニュージーランド・ホンダ)、ラファエル ティモシー(サモア・神戸製鋼)。

現行のルールでは、「当該国に3年間以上住み続けている」という条件を満たせば、当該国の選手としてワールドカップに出場できることになっています。外国籍の日本チームメンバーのほとんどがこの条件を満たして日本代表になっていると思います。

もともと、ラグビーの世界は、多国籍に寛容ですが、このルールを利用して、日本チームを強くしようとしたのが、あの平尾誠二でした。

平尾誠二が率いた99年のワールドカップ・ウエールズ大会。このとき、1試合に平均5.7人の海外出身選手を使いました。99年当時は「1選手が2カ国の代表チームでプレーすることができる」というルールになっており、この国際規定を、平尾誠二は最大限利用したのです。

99年のワールドカップ・ウエールズ大会は、4戦全敗で、平尾誠二は責任をとって日本代表のGMを辞めましたが、このウエールズ大会に選手であった岩淵氏が2012年に日本代表のGMになったとき、過去の日本代表や海外チームの分析を行い、「平尾さんのときに日本代表がやったことはすごく進んでいた」という結論に達しました。そういうふうに、谷口誠さん(日経新聞記者)が、日本経済新聞に書いています(2016年10月24日)。

平尾誠二が目指したのは、「個」を重視するチーム作りでした。先月号で紹介したアメリカの映像配信会社Netflixの「すべてのポストにもっとも優秀な人材を充てる」という方針と同じでした。そのことを、平尾誠二は、いまから20年以上前に、考えて実行していたのです。

iPS細胞の山中伸弥氏の本『友情』の中に、平尾誠二が残した言葉がそのことを雄弁に語っています。

ラグビーは、個人競技である

ラグビーはチーム競技か個人競技かっていった時に、実は個人競技の部分が圧倒的に多いと思うんです。いちばん素晴らしいチームワークは、個人が責任を果たすこと。それに尽きるんですよ。そういう意識がないと、本当の意味でのいいチームはできない。

助けられている奴がいるようなチームは勝てない

助けられている奴がいるってことは、助けている奴がいるわけです。その選手は、もっと自分のことに専念できたら、さらにいい仕事が出来るんです。強いチームっていうのは、助けたり助けられたりしている奴はひとりもいない。どの選手も、プロフェッショナルとしての意識が非常に高くて、本当に貪欲に挑み続けて、できなかったらそのことに対して最大限の努力をしていく。それが、一人一人の選手が持たなくちゃいけないチームワークとしての姿勢だと思うんです。

「すべてのポストにもっとも優秀な人材を充てる」には、世界中から人材を集める必要がありました。

平尾誠二は、世界から人材を集めることができるように、いろいろなことを企画し、実行したのです。

最近、ファーストリテイリングの柳井正氏が、「世界から優秀な人材を集めなければ、企業は衰退する」と言い始めています。トヨタの豊田章男社長が、「総合職に占める中途採用の割合を中期的に5割に引き上げる」と言っています。

「プロを意識した優秀な人材でなければ、いい成果は出せない」ということを、いま現在、危機感を強く持っている経営者が言い始めています。平尾誠二は、20年以上前に、それを実践していたのです

(M.S.)