- 活動紹介
第452回例会報告
第452回例会報告
2023年1月18日(水)、ユニオンビル2F セミナールームA(武蔵小杉)よりリモート会議にて、41会員 94名(リアル16名、リモート78名)の出席により第452回 ATIS例会を開催しました。当日行われた議事の中から、 (1) 株式会社日本電気特許技術情報センター 友部 実 様によるシンポジウム、(2) 株式会社テルモ シニアスペシャリスト 岸 俊介 様によるご講演「ダイバーシティとインクルージョン -知財とテニスと障がいと-」について紹介します。
シンポジウムでは、日本電気(NEC)の会社概要、事業計画、組織体制、知財活動についてのご紹介と、日本電気特許技術情報センターの会社概要、組織体制、人員構成、近年の取り組みについてのご紹介がありました。NECでは、安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現をパーパスとして掲げております。このパーパスの実現に向けて生活者を取りまく場を「環境」「社会」「暮らし」の3つの階層で捉え、それぞれの未来像が描かれたNEC 2030 VISIONと、NEC 2030 VISION が盛り込まれた2025中期経営計画の概要についてのご発表がありました。また、知財活動のご紹介では、NECの知財部門において特許の「量」の充実と同時に「質」の向上にも注力しており、新たな技術や事業の“共創”を知財で促進する取り組みを行っているとのお話がありました。 日本電気特許技術情報センターは、NEC事業を強化する知的財産の創出、管理、運用、およびNECの経営に資する情報提供を実現することをパーパスとして掲げ、発明創出および権利化支援を行っているIP創造サービス事業部, 特許事務管理支援を行っているIPマネジメントサービス事業部, 調査分析や情報サービスの提供を行っている情報リサーチサービス事業部の3つの事業部体制(約200名)からなっております。人員構成のご紹介の中では、50歳以上の社員が半数以上を占めており、高齢化が課題であること、NECからの出向者の獲得が困難になってきており、新卒や経験者採用の強化が課題であるとのご発表がありました。また、近年の取り組みとして、開発現場に入り込んで支援し、事業に必要な技術を権利化するための「発明Work Shop」、費用予測、費用管理、知財事務支援を一体でサポートする「特許費用一元化支援サービス」、IPランドスケープを駆使しながらNECの知財部門が推進する事業や知財戦略策定のためのコンサル業務を支援する「知財コンサル支援サービス」についてのご紹介がありました。
次に、テルモ シニアスペシャリスト 岸 俊介 様から「ダイバーシティとインクルージョン -知財とテニスと障がいと-」についてご講演がありました。岸様は、企業の知財部門で指導的な立場を担われているだけでなく、テニス界でも日本を代表するトップアスリートとして世界で活躍されております。
知財と障がいに関するご講演では、知財の仕事は、障害があってもいろいろ工夫して行うことができるため、障がい者に向いているのではないか、とのお話がありました。また、障がい者の人口比率に関する近年の統計データと障がいの種類について解説いただきました。身体障がいにおいては、高年齢化に伴い高齢の障がい者が増加傾向であるのに対し、若年層の障がい者が減少傾向であり、後者については交通事故の減少が関連している可能性がある、とのお話がありました。また、限局性学習症(LD)、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠陥・多動症(ADHD)といった新たに障がいと認められるケースが増加していることや、うつ病や適応障害の患者が増加していることで、精神障がい者の数も増えてきているとのお話がありました。
また、健常者からみた障がい者に対する考え方が日米で違いがあり、米国では日本よりもリスペクトの対象とされることが多いこと、また、障がいがある人の心理としては、特別扱いをせず配慮してもらいたくない気持ちと、配慮してもらいたい気持ちとがせめぎ合っており、どちらの気持ちが強いのかについては、障がい者の年齢や、障がい者となった年齢などによって異なること、障がいについての受け止め方では、親や周囲と本人とで異なる場合が多いこと、などを解説いただき、ダイバーシティについての取り組みの中で目指すべきキーワードとして「普通にそこにいること/いられること」、「Inclusion & Equity」をご教示いただきました。
テニスに関するご講演では、障がい者立位テニス(Adaptive Standing Tennis)について、岸様が出場し、優勝された試合の実際の映像を使いながら、脚の使い方や体の動かし方を分かり易く解説いただきました。障がい者スポーツは、長野オリンピックの頃から認知度が高まっており、今ではテレビのCMにも多くのパラアスリートが出演するなど、健常者アスリートの差が急速に小さくなっております。一方で、障がいの種類が、部位も含めて非常に多岐に渡るため、競技種目のクラス分け、カテゴリ分けが非常に難しいことが課題となっているとのことでした。ご講演後は、テニスの練習時間や方法、義足等の技術的な進歩により健常者と一緒にプレイする可能性等についての質問があり、活発な討議となりました。
ご講演を通じて、障がい者や障がい者スポーツについての理解を深めることができ、多くの気づきを得ることができました。障がい者立位テニスはパラリンピックの正式種目となっておらず、日本障がい者立位テニス協会(JASTA)などの競技団体が将来の正式種目化を目指しているとのことです。近い将来に正式種目化が実現され、岸様が日本代表として出場し、ご活躍される日が来るのを祈念いたします。
以 上