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第471回例会報告

2024年1016()、日本製鉄株式会社の東日本製鉄所、鹿島地区にて第471ATIS例会を開催しました。リアルのみの会議で30名が参加しました。当日行われた議事の中から、製鉄所の工場見学と、コニカミノルタコネクト株式会社によるシンポジウム講演について紹介します。

 

(1) 東日本製鉄所、鹿島地区の工場見学

同地区は、旧住友金属工業(株)の鹿島製鉄所で、196812月の開所、総敷地面積は約1000m2とのことです。現在は、日本製鉄(株)の東日本製鉄所の主力製造拠点のひとつです(東日本製鉄所のもうひとつの主力拠点は君津地区)。水深の深い鹿島港に隣接しているので、外国からの鉄鉱石と石炭を積んだ巨大な運搬船が入港できます。これらの原料から様々な鉄鋼製品を製造し、再び鹿島港から国内外に向けて出荷する一貫製鉄所として稼働しています。

製鉄所正門の向かい側にある人材育成センターの大ホールに集合し、鹿島地区紹介ビデオを視聴したのち、二班に分かれて二台のバスに分乗して製鉄所の工場見学に出かけました。全員、見学用の安全服に着替えて、ヘルメットと軍手を装着し、ガイドさんの説明を聞くためのイヤホンレシーバーと熱中症対策としてペットボトル入りの水が支給されました。見学した工場は以下のとおりです。

 

①製鋼工場(転炉);300トン規模の鍋に、まずスクラップを装入し、その後、高炉から運ばれてきた高温の液体の鉄(溶銑と呼ばれます)を注入する一連の工程を見学しました。まず、工場内で出た鉄くずを巨大なシャベルのようなスクラップ・シューターで鍋に落とし込み、スクラップに付着した水分が蒸発するまでしばらく静置します(水蒸気爆発を防止するため)。その後、クレーンに吊られた巨大な別の鍋が移動してきて、中の溶銑を注ぎ込みます。鍋の後ろ側からの見学になりますが、オレンジ色の溶銑が火花を挙げて注入されていく豪快な様子を見ることができました。

②熱延工場(圧延);約20トンの鉄塊(スラブと呼ばれます、クルマ1台に使われる鉄が約1トンなので、1回の熱延でクルマ20台分の鉄板を作ることになります)を加熱炉で加熱し、粗圧延→仕上げ圧延→冷却→コイル巻取り、までの一連の工程を見学しました。スラブが出てくる加熱炉から終端の巻き取り装置まで、設備全長約700mを上方のデッキを歩いて追跡しました。オレンジ色に光るスラブが出てくると、上方のデッキにまで熱風が吹いてきます。長さがどんどん長くなっていく鉄板は、最高で時速100kmで圧延ラインを移動するそうで、ここでも豪快な景色を見ることができました。

③第一高炉;高炉の外観が一望できる場所に記念撮影スポットが設けられており、そこで集合写真を撮影しました。(ちなみに製鉄所内で撮影が許されているのはこの場所のみで、高炉の方面にのみレンズを向けることが許されています)。

 

日本のモノづくりを支える製鉄業の代表的な一貫製鉄所で、最もダイナミックといえる工場を見学させていただきました。子供たちの社会科見学も頻繁に行われているそうで、近隣の市町村では小学校5年生が見学に訪れるそうです。高炉を使った製鉄業は大量のCO2を排出します。世界は鉄でできている、と言えるほど、人類は鉄鋼製品の恩恵を受けていますが、これからはCO2の排出をできる限り抑制する新たな製法が求められており、鋭意、研究開発が進められているそうです。それが実現された次世代の製鉄所の見学に思いをはせると、これもまた非常に楽しみだと思いました。

(2) シンポジウム講演

コニカミノルタコネクト株式会社の遠山大雪様からシンポジウム講演がありました。

まずコニカミノルタ株式会社全体の会社概要について紹介がありました。フィルムが主力だったコニカ(小西六)とカメラが主力だったミノルタカメラが2003年に統合して誕生した会社です。しかし、2007年に写真フィルムを中心とするフォト事業とカメラ事業は終了し、現在は、複写機、計測・検査機器、ヘルスケア(超音波診断)、プラネタリウム、教育ソリューション、などが主たる事業とのことです。中でも、プラネタリウムは唯一のB to C事業で、池袋サンシャイン、有楽町マリオン、東京スカイツリーおよび横浜で展開中、訪れたことのある方も多いかもしれません。

コニカミノルタGrの売り上げは2019年に年間8600億円まで落ち込んだそうですが、2023年度は11600億円まで回復し、現在は、2023-2025年度の中期経営計画で事業の選択と集中を実行中とのこと。2030年を見据えて、「Imaging to the People」を経営ビジョンとして掲げ、「お客さまの「みたい」を実現する」ためにまい進中です。コニカミノルタGrの社員は全世界で約4万人(内、日本は1万人)だそうですが、現在6%の人員(約2400人)の適性化を計画中とのことです。

コニカミノルタコネクト㈱は、1971年創業で現在の社員数は約1000人、親会社の総務部が管轄されています。これは同社の事業の主体が知財ではなく、不動産管理やエンジニアリングなどの設備対応、シェアードサービス、人材派遣や購買など多様な事業を行う会社であるからとのこと。知財部門は約20名で、その8割が委託者で社員(出向含む)は5名ほどだそうです。知財部門の売上は年間約1億2000万円で、半分が知財調査関連によるもの。業務範囲は、2015年以前には、出願権利化、公報の配布、翻訳も手掛けていましたが、2022年には、知財の調査および監視、研修や教育にしぼってきたそうです。

 

知財部門の特徴としては、以下のように述べられました。

DXがわかる、できる社員の減少と高齢化が進んでいる。親会社の拠点が国内に点在化しているので業務委託者の確保は順調に進んでいるが、近年は高齢者が増加している状況。

DX活動に注力している。特許調査のサポートツールの自製(親会社知財部門)、API連携、複数ツールの共通UI化など。

AI検索の活用、定常監視業務へのAI活用などに取り組み中。

・検索技術向上のための教育は動画コンテンツを作成し、省力化を図っている。また、受講後の模擬試験の実施や模範解答の解説などのプログラムもある。

 

知財部門の課題としては、以下を挙げられていました。

・高齢化対応とマネジメント人材の確保と育成。

AIを活用した新サービスの開発

・コニカミノルタコネクト㈱・知財部門の、コニカミノルタグループ会社内での存在価値向上と売り上げの回復。

以上