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第474回例会報告

2025年116日(木)に、第474ATIS例会をアーバネックス御池ビル東館(京都)にて開催しました。リアル・リモートを併用した会議で、40会員100(リアル36名、リモート64)が出席しました。

当日行われた議事の中から、(1) 正会員である株式会社エムテックによるシンポジウム講演、(2) ダイキン工業株式会社 知的財産部長 安部 剛夫 様によるご講演「事業と環境のサステナビリティに貢献するダイキン工業の知財活動」について紹介します。

 

(1)シンポジウム講演

株式会社エムテックの木全様からシンポジウム講演がありました。親会社である三菱電機の事業・知財活動の紹介、エムテックの概要と活動紹介、SECIモデルを活用した情報共有などについてご説明いただきました。エムテックは三菱電機100%出資子会社であり、知財調査、特許事務、知財基盤、知財システムの4つの事業を、三菱電機知財部門と一体となって推進されています。なかでも特許調査に関して、研究所や事業部門のOB等を積極的に採用、サーチャーとして育成することで三菱電機の事業の広さに対応していることについてお話がありました。

エムテックでは、SECIモデル(一橋大学名誉教授 野中様が提唱したナレッジマネージメントのフレームワーク)を社内の情報共有に活用されています。例えば技術情報に始まり、経営会議資料や年次計画、調査レポートなどを、SharePointを介して共有し、コミュニケーションを活性化して知識のブラッシュアップやIPLの実践などに取り組んでおられます。質疑の時間には、特に親会社との実務的な分担内容や調査員の育成に関して活発な議論が行われました。

 

(2)ダイキン工業株式会社 知的財産部長 安部 剛夫 様によるご講演「事業と環境のサステナビリティに貢献するダイキン工業の知財活動」

ダイキン工業株式会社の知財活動の事例として、「クリエイティブな知財」を掲げ「環境技術のオープン・クローズ戦略」と、大学やベンチャー企業等を想定した「外部共創の円滑な推進」についてご紹介がありました。

「環境技術のオープン・クローズ戦略」では、インバータ機の普及が遅れている中国において、主要メーカである格力電器へインバータ技術を供与。2009年に7%だったインバータ機比率を2018年には76%へ高め、地球環境に考慮した省エネ技術の普及に貢献されています。また、エアコン等に用いる冷媒に関して、モントリオール議定書の採択とWHOのシミュレーションをきっかけとして、オゾン層への影響がなく地球温暖化係数(GWP)が低い冷媒(R32)に関する特許を、新興国へ無償開放した事例について説明いただきました。

また、技術開発においては自社のみではなく、大学やベンチャー企業との共創を推進されています。国内の大学としては、大阪大学、東京大学、京都大学など多くの大学と複数年の包括契約を締結し、多様化するニーズに対応した最先端の技術との融合を積極的に推進されています。

このようなオープン・クローズ戦略をもとに地球温暖化対策などの社会課題の解決を図ることで、企業としての成長を実現されています。

質疑応答では、冷媒(R32)特許の無償開放に関連する質問があり、R32に関してはそもそもシェアが高く、欧州のCO2排出規制等を考慮して市場の拡大を優先させたということでした。また、無償開放の対象となる特許の社内報奨や海外拠点でのポートフォリオ管理、大学との共創に関する開発テーマの管理方法など、出席者から多くの質問をいただきました。先進的な取組を主導されている安部様ならではのご講演で、出席者に大変興味を持っていただきました。