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第476回例会報告

03月19()、金沢工業大学大学院 虎ノ門キャンパスにて46社・100(リアル45名、リモート55)の出席により第476 ATIS例会を開催しました.当日行われた議事の中から、賛助会員である (1) 株式会社知財コーポレーション様と (2) 中央光学出版株式会社様によるプレゼンテーションと (3) 特許庁 企画調査課長 柳澤 智也様による講演「イノベーション促進のための知財エコシステム構築に向けた特許庁の取組」について紹介いたします。

(1) 株式会社知財コーポレーション様

株式会社知財コーポレーション様より日本知的財産翻訳協会(NIPTA)実施の機械翻訳やAIなどのツール活用についての業界の声及び知財コーポレーション様の基本思想、翻訳システム及びコストダウン実現のための方法の紹介がありました。

知財翻訳や生成AI導入済み企業は75%に及んでいることもあり現在の機械翻訳、生成AIは知財翻訳において十分実用に耐えられるレベルであると考えられるとのことです。また出願人企業としては高い翻訳能力をもちながら機械翻訳や生成AIも活用して効率よく翻訳を行える人材が求められているとのことです。

さらに、最新の機械翻訳や生成AIツールを活用できるデジタルリテラシーも要求されるようになっています。このように求められる能力が上がっているのに対し、翻訳単価は低下を続けており、翻訳業務の魅力が低下し結果として、将来知財翻訳を担う人材が不足、業界が成り立たなくなってしまうのではないかと懸念しているとのことです。

知財コーポレーション様は「専門家の価値を最大限に活かす」、「効率化と価格だけに囚われない」、「テクノロジーと人間の協働による業界の健全な発展」の三本柱を基本思想としています。

また、具体的なコストダウン実現の手法について、日本語明細書を短文化すること、人手での修正箇所の取捨選択が挙げられていました。

最後にAIを活用したサービスとして、海外OA対応サポートサービスが紹介され、「独自開発AIの活用」「テクノロジーと専門性の融合」「コストの大幅な削減」「柔軟な納期対応」を特徴とするとのことです。

発表終了後も、知財翻訳だけでなく一般的な課題として、「デジタルリテラシー」、「継続的な学習姿勢」等について、活発な質疑がなされました。

(2) 中央光学出版株式会社様

中央光学出版社様は1975年設立(今年で50周年)で、PatSnap等のソフトウェアの提供事業及び各種調査、翻訳などのアウトソーシング事業を行っており、一貫して特許情報を提供するサービスを行ってきたとのことです。

続いてPatSnap AIの新機能についての紹介がありました。具体的には①クレーム構造ビジュアライザー、②画像から類似する公報の検索、③検索クエリジェネレータ、④AIがフィールドの4つについて説明があり、中でも③検索クエリジェネレータは、これまでブラックボックスだったAIセマンティック検索の過程を見える化した検索システムとのことです。またこの検索クエリジェネレータとAIタグ付与機能を活用したスクリーニング方法を紹介していました。

発表終了後も、紹介があったPatSnapの機能についてだけではなく、AIセマンティック検索全般について、活発な質疑がなされました。

(3) 特許庁 企画調査課長 柳澤 智也 様のご講演

最後に特許庁 企画調査課長 柳澤 智也様により「イノベーション促進のための知財エコシステム構築に向けた特許庁の取組」と題してご講演をいただきました。

まずは知財エコシステムを取り巻く現状と課題として、特許庁のミッション・ビジョン・バリューズ(MVV)、先進国における無形資産投資と企業収益力の状況、知財経営による「稼ぐ力」の強化、知財経営の浸透状況、知財経営の概要、中小企業・大学・スタートアップにおける知財経営、革新的技術への対応、DX時代を反映した制度設計に関する検討について説明がありました。

この中で、知財などの無形資産は製品・サービスの付加価値を高めることができ、企業の「稼ぐ力」を向上させること。経営層のコミットの下、知財経営を推進する日本企業が出てきている一方で、多くの企業では知財経営への意識がまだまだ低いこと、特に中小企業、大学、スタートアップ企業に対して知財経営の支援が必要であることの説明がありました。同時にAI技術などの革新的技術に伴う環境の変化を踏まえた知財制度、審査体制の整備も必要であることが説明されました。

続いてイノベーション促進のための知財エコシステム構築に向けた特許庁の取組について、発行している資料や発信力強化の推進の説明がありました。

具体的には特許庁などが発行する資料としてIPランドスケープ実践ガイドブック、知財経営の実践を支援するための事例集・ガイドブック、OIモデル契約書、オープンイノベーション促進のためのマナーブック、技術動向調査の分析結果の発信力強化の紹介がありました。

各企業などを支援する取組としては、IPランドスケープ支援事業、知財経営支援ネットワーク、知財金融事業、知財アクセラレーションプログラム(IPAS)、ベンチャーキャピタルへの知財専門家派遣事業(VC-IPAS)、スタートアップに対するプッシュ型支援(PASS)、スタートアップ知財支援基盤整備事業(IP BASE)、大学向け知財支援施策・取組(iAca,iNat)、など多岐にわたる事業の紹介がありました。。

また、各支援や制度の整備などのための、知財経営の開示、中堅企業における知財経営の実態に関する調査、大学知財の社会実装機会を最大化するベストプラクティスの調査、AI審査支援チームの体制強化、AIアドバイザーの新設、AI技術の進展を踏まえた発明の保護の在り方に関する調査研究、イノベーションや発明の創出に寄与する人材の多様性や包摂性に関する調査について説明がありました。

発表終了後も、紹介があった特許庁の取り組みについてだけではなく、特許庁の審査における外国文献の優先度や、AIによる発明の場合の発明者の取り扱い、特許庁が使用するAI検索ツール等について、活発な質疑がなされました。