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第478回例会報告

2025年521日(水)、大田区民ホール・アプリコ 小ホールにて第478ATIS例会を開催しました。今回はリアルとリモートのハイブリッド形式で行われ、207名が参加しました。当日行われた議事の中から、エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社様によるシンポジウム講演について、また「生成AIが特許調査の現場に与える影響」をテーマにしたパネルディスカッションについてご紹介します。

 

(1)シンポジウム講演

 

エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社様より、知財ビジネスの紹介とIPランドスケープの取り組みについて、具体的な例をご紹介いただきました。特に、実際に行っているIPランドスケープの取り組みについては、参加者から高い関心を集めました。

エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社様は、NTTグループに属しています。グループの事業構造の進化や昨年のNTT法の改正をうけ、202571日から親会社の「日本電信電話株式会社」は「NTT 株式会社」へ社名変更するなど、グループ全体として国内外で広く親しまれている通称「NTT」を正式に商号として採用する予定です。

NTTグループの新中期経営戦略として、DXやデータ利活用の取り組みに加え、データセンタにおける消費電力問題など環境エネルギーへの取り組みも重要になってきており、技術の柱としてIOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)を世界に向けて提案しています。エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社の事業内容も、通信技術やDX支援だけではなく、光ファイバー関連製品、パワー半導体基板等多岐にわたっています。

組織については、アプリケーション、マテリアル&ナノテクノロジ、ソーシャルプラットフォーム、トータルソリューションの4つのビジネス本部となっており、アプリケーションビジネス本部の中に、IPビジネス部門が含まれています。

IPランドスケープの取り組みとしては、知財部門だけにとどまらない顧客の開拓として、ネットワーク関連の国内最大の展示会でお客様向けにセミナーを開催したり、通信事業者が手がけていなかった事業分野を支援するために、市場調査会社であるNTTデータ経営研究所と連携したり、といった具体例が紹介されました。

IT分野の事業領域に適応したチャレンジングな事例を含め、なかなか聞くことができない他社のIPランドスケープの取り組みを、具体的な実例を含めてご紹介いただいたため、非常に有用なシンポジウムとなりました。

 

(2)パネル討論

 

モデレータの

  • スマートワークス株式会社 酒井美⾥様

が進行を務め、以下のパネリストの方々が登壇しました。

  • パテント・インテグレーション株式会社 大瀬佳之様
  • 佐藤総合特許事務所 佐藤寿様
  • アズテック株式会社 静野健⼀様

パネルディスカッションでは、生成AIが特許調査の現場に与える影響について、実務への具体的な影響、調査人材の学び直し・育成の在り方といった視点から、実務家、開発者の知見を交えた、これからの調査実務の姿を考えながら行われました。

まずポジショントークとして、モデレータの酒井様から、特許調査の現場でも生成AIの活用が進んでおり、ワープロや特許データベースが普及したときの変化と似ており、当時と同じような転換の時期に立っているという説明がありました。

続いてパネリストの大瀬様からは、生成AIが公開されてから2年がたち、新たなステージになっており、生成AIを活用していかなくては、競争優位を築くことが困難になりつつあるという説明がありました。

佐藤様からは、生成AIについての、3つの問題点、秘密情報を生成AIに入力して良いかの問題、生成AIの進歩が速すぎる問題、生成AIの生成物の質と非保障性の問題と2つの必要性、教育体制の強化の必要性、付加価値の提示の必要性についての説明がありました。

静野様からは、生成AIの教育を含んだ、組織内への導入方法について、特許調査会社の視点から3つの視点(目的と方針の(継続的な)検討、体制構築、業務導入・文化の浸透)についての説明がありました。

 

パネルディスカッションでは、

1つ目の視点として、生成AIが特許調査の現場に与える影響について、生成AIが進化したと感じた点、気を付けたほうが良いというリスクについて、AI開発側と特許調査の現場ニーズとのギャップについて等、ディスカッションが行われ、使う側の人間のスキルも問われる点、プロセスを追って活用すべき等、問題点や対策についても話題となりました。

2つめの視点としては、人材育成とリスキリング(学び直し)について、人材育成あるいは自身の学びで難しさや変化を感じた事について、世代間でのAIの適応や温度差について、スキルのギャップについて等を中心に、ディスカッションが行われ、世代間でのギャップはあまり感じず、コミュニケーション等のヒューマンスキルの方が重要ではという点も話題となりました。

それぞれのディスカッションでは、今回のパネリストの業務を生かした、実務家、開発者等の様々な立場からの考え方が紹介されたり、Webツールを用いて、リアルタイムでの参加者全員へのアンケートを行い、パネリスト以外からの参加者のアンケート結果についてもディスカッションが行われたり、白熱したディスカッションとなりました。

ディスカッションが尽きない中、最後に、「生成AIは、インパクトがある技術であり、未知の可能性も隠れている技術であること。仕事が効率化する半面、多忙になってしまう可能性もあるが、今回のディスカッションが、技術の変革点を楽しみながら、生成AIを活用していくというきっかけに少しでもなれば」と、まとめていただきました。

参加者は時間を忘れてしまうほどの非常に濃密なパネルディスカッションの時間を過ごしました。

 

例会後、会場近くのスペイン料理店にて懇親会が開催されました。会場参加者が立食パーティ形式で集まり、非常に盛り上がった会となりました。初参加の方々のスピーチや講演者の皆様、ATISメンバーとの交流を通じて、多くの貴重なお話を伺うことができました。懇親会は飲食を共にしながらカジュアルな意見交換が積極的に行われ、ATIS参加の大きな価値の一つとなっています。

 

以上