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臨時総会・第479回例会報告

2025年611日(水)、キヤノン株式会社下丸子本社にて、44会員・131名(リアル参加61名、リモート参加70名)の出席のもと、ATIS臨時総会および第479回例会を開催しました。

まず臨時総会では、新任5名を含む次年度幹事の選任に関する議案が、全会一致で承認されました。続いて例会では、代表幹事より会員の入退会状況や例会活動の報告が行われました。その後、8つの分科会による年間活動報告および質疑応答が行われました。

今年度は1分科会を除き、7つの分科会がリアル会場での報告となりました。また、全ての各分科会で懇親会が開催されており、さらには外部との交流も活発で、有意義な活動が行われていることが垣間見えました。

最後に、今年度は参加人数が集まらず休会となった「Z・ミレニアル世代の若手意見交換分科会」について、担当幹事より改めて募集の説明があり、参加各社に対して若手社員の積極的な参加を呼びかけました。

 

以下に各分科会の発表内容を簡単に紹介いたします(報告順)。

 

【① 調査業務運営分科会】

本分科会は、各社の調査事業や業務課題に関して意見交換・情報交換を行うことにより、解決策を見出すことを目的としています。本年度は2月に中間報告を実施していますので、後期に実施した集中討議2回分と、特許庁/INPITとの意見交換会(3)、外部有識者による講演会(6)を中心に報告が行われました。

5回の集中討議では、「人材戦略・育成・マネジメント」「業務ニーズ・提供サービス」「ツール・業務効率化」をテーマに取上げ、特に関心の高いAI活用についても議論が交わされました。意見交換会、講演会においては、昨年度と比べて分科会の参加人数が減っているものの、活発な議論が行われています。

 

【② 調査技術分科会】

本分科会は、調査手法や調査ツールに関する意見交換・情報交換、調査演習などを通じて、参加者の調査スキル向上を目指しています。参加者は調査経験1年未満から5年程度と比較的若手が中心です。本年度は、通常回計9回に加え、特許検索競技大会スキルアップセミナーや特許庁との意見交換会など、追加の取組みも行われました。

通常回では調査関連の意見交換会が3回、検索競技大会過去問題の演習会が3回行われました。意見交換会では「参加者の調査フローの紹介」、「特許分類の選定」、「同義語・類義語・シソーラスの選定」などの意見交換が行われ、「共通の悩みを共有でき、解決の糸口が見えた」との声が寄せられました。また、検索競技大会過去問題の演習では、「他者のアプローチを知ることがスキル向上につながった」との声が上がっていました。

 

【③ 知財分社経営分科会】

本分科会は、知財子会社に特有の経営課題に対して、参加者同士が本音で意見を交わす場として運営されました。参加者は共通課題ごとに小グループで議論し、実務に即した気づきや解決策を持ち帰ることができました。

主な議論テーマは、「人材確保・育成」「モチベーションの向上」「生産性向上・新技術導入」「親会社との関係性」などです。生産性向上・新技術導入では、AIや生成AIの活用に関する議論が盛んでした。

5月には、外部有識者を招き、「AIが知財業務に与える影響」をテーマとした講演会が開催されました。AIを活用した各種サービス、また、それらが知財業務に与える影響、さらにAI時代における知財業務に携わる人々に必要なマインド、スキル、人材育成など、幅広いテーマについてお話を伺いました。

 

【④ コーポレートサポート分科会】

本分科会は、総務・人事・知財など多様なバックグラウンドを持つメンバーが参加し、DXや生成AIの活用、人的資本経営、リスクマネジメント、関連法令の改正対応など、時代の変化に即したテーマについて活発な議論が行われました。

参加者からは「バックオフィス部門でのAI活用はこれからの段階であり、将来に向けた備えが必要」との声が多く聞かれました。その備えの一環として、フィールドワークで業務関連の展示会へ参加し、最新動向の把握に努めた事例が報告されました。展示会ではDX関連ソリューションが多く見られた一方で、AIの具体的活用事例はまだ少なく、導入は発展途上にあるとの認識が共有されました。今後も、関係者の意識向上と継続的な備えが求められます。

 

【⑤ 特許情報研究分科会】

本分科会は、特許情報の最新情報を収集し、分析、活用、研究を通して各自の知識向上を図り、業務改善に寄与することを目的としています。サービス提供会社と調査会社がほぼ半数ずつという構成であり、「オープンな姿勢」を大事にして、立場を超えた活発な情報交換が行われました。

今後AIが進んでいく中で、基礎情報の知識が重要になってくるという考えのもと、特許情報のデータの実態などの調査を行っており、報告ではその内容の一部が紹介されました。

今後もサービスと提供会社と調査会社が参加しているという特徴とディスカッション形式での進行を踏襲しつつ、生成AIの活用や、IPランドスケープ、情報解析について調査を進めていく予定である。

 

【⑥ 新興国の知財調査分科会】

本分科会は「新興国知財情報のエキスパートをめざす」をミッションとし、主にASEAN諸国における知財情報の収集・分析手法を研究しています。本年度は、2月に中間報告を実施しており、今回は後期に実施したインドネシア・ベトナム・タイを対象とした内容を中心に報告されました。

各国の特許庁DBや商用DBの比較・検証を行い、本年度のテーマの一つであるASEAN IP REGISTERについては、特許庁DBとの整合性は一定水準にあるものの、収録深度の面で限界があり、「活用は限定的」との認識で一致しました。また、商用DBは国ごとに強みが異なるため、単独利用ではなく併用が望ましいとの結論に至っています。

次年度はベトナムへの現地調査を計画しており、DBの信頼性や実務上の運用実態のさらなる把握に努める予定です。

 

【⑦ IPランドスケープ研究分科会】

本分科会は、IPランドスケープ実務に携わる担当者間で情報・意見を交換することにより、各社の取り組みの深化と発展を図ることを目的としており、テクニカルな話題に焦点を当てた活動が行われました。

各社持ち回りでの発表を行い、実務に直結するテーマを幅広く扱いました。また、外部講師による講演も実施し、IPランドスケープにおける分析の手法について更に理解を深めることができました。本年度は、新たな取り組みとして、特許庁の実践ガイドブックに記載された知財力評価手法に関して、各社ツールを使用したスコアリングの検証を行いました。その結果、ツールごとの評価基準の違いなど、意外な気づきも得られました。本検証には複数のベンダーの協力があり、各企業だけでは実現できず、ATISの活動だからこそできたことだと思われます。

IPランドスケープについては、ここ数年でツールが揃ってきた状況ではありますが、生成AIにより新たな展開が始まっています。引き続き、IPランドスケープ実務における新たな視点や可能性を探っていきます。

 

【⑧ 特許翻訳分科会】

本分科会では、本年度、生成AIの特許翻訳業務への応用可能性を検証し、実務上の効果や課題を明らかにすることを目的として活動しました。本年度は、2月に中間報告を実施しており、今回は後期に実施した外部有識者「生成AIの翻訳実務への活用と可能性」の講演と、その講演を受けて翻訳工程全体のどこにAIを組み込むことが最も有効かという点に焦点を当てた報告が行われました。

翻訳工程の、翻訳前、翻訳、ポストエディット、チェックの4工程において、ChatGPT-4oを用いてた検証を行った結果、全ての工程において特許翻訳実務に求められる精度水準には達していないという結論に至りました。しかし、生成AIの現実的な実力を「率直に」判断できたことは大きな収穫であり、会社を超えて翻訳プロセスにおける課題をAIで解決するという検討過程は大変有意義でした。次年度は、プロンプトの作成や用語集の作成について検証を行っていく予定です。

 

【⑨ Z・ミレニアル世代の若手意見交換分科会】

本分科会は、若手メンバーが業務上の悩みや課題を持ち寄り、自由に意見交換・議論を行う場ですが、本年度は、ATIS内規に定める参加者数を満たさず、休会中です。

次年度の再開に向けて、参加者募集と、分科会の主旨・狙いや新しい取組みのアピールが行われました。従来より、幹事会から分科会にアドバイザーを派遣して、議論の促進などの支援を行っていますが、次年度は幹事会からのサポートをさらに強化する予定です。

 

例会後には、キヤノン本社B棟 レセプションルームにて立食パーティー形式による懇親会も開催されました。54名と多くの会員が参加し、おいしい食事に舌鼓を打ちつつ、会員、分科会の垣根を越えて交流を深めることができました。