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涼しい服「空調服」- ことし、多く見かけました。特許戦略は? –

今年の夏は、めりはりがついていましたね。7月は、寒い梅雨でした。最高気温が25℃を下回る日が多く、海水浴場の「海の家」は悲鳴をあげていました。7月29日に梅雨が明けると、こんどは「酷暑」。最高気温35℃の日が続きました。

一方で、我が家のある「みなとみらい」は、建設ラッシュ。新しいビルやホテル、アメニティホールが建設されています。

そこで働く人たちが、コンビニにきてランチを求めますが、今年の夏は、酷暑の中、下の写真の「空調服」を着ている人を、とても多くみかけました。

※ ユニホームタウンのHPより

「この暑い中、ベストなんかを着て、おかしいんじゃないの?」と思いましたが、ネットで調べてみると、「一回着ると離せない」という優れもののようです。確かに、着ている人は、汗をぬぐうこともなく、「涼しい顔」をしていました。東京オリンピックでも、大流行になるだろうと言われています。

空調服は、ファンから服の中に毎秒数リットルの外気を取り込み、その空気が服と体の間を平行に流れ、かいた汗を気化させます。その気化熱で体が冷え、服の中を通った暖かく湿った空気が襟元から排出されるそうです。

人間の脳は、皮膚の温度センサーから「暑い」という信号が送られてくると、汗腺から必要な量の汗を出し、汗の気化熱で体温をコントロールしますが、この機能を効果的に利用するのが、「生理クーラー理論」で、市ヶ谷弘司氏が独自に命名したと言われています。

「空調服」を作り出したといわれている市ヶ谷弘司さん。元ソニーの社員で、1991年にソニーを早期退職し、(株)セフト研究所を設立しました。ブラウン管測定器の販売に赴いた東南アジアで「生理クーラー理論」を着想し、この理論を応用した「空調服」を開発したといわれています。

2003年、「空調服」の特許出願(PCT出願)が、セフト研究所から行われています。その特許請求の範囲は、下のとおりです。とても「いい感じ」のクレームになっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

添付された図面も、下図のように、今の「空調服」をシンプルに表現したものになっています。

この特許出願が、権利化されていれば、2023年まで、「空調服」の製造販売を独占できます。

ところが、この特許出願は、「拒絶査定」になっていました。引用文献は、実開昭64-30308。「送風機付き合羽」という名称の実用新案でした。

「拒絶査定」になったら、あっさりと諦めています。せめて、1回、審判に上げて、粘ればよかったと思いますが、それもせずgive up。PCT出願までしているのですから、もったいないです。

「空調服」が売れてくると、つぎつぎと新しい企業が参入してきます。作業服の製造販売を行っている会社の参入が多くなりました。

「空調服」の元祖・セフト研究所は、2018年7月、福山市の作業服メーカー「ビッグホーン商事」を特許侵害で、提訴しました。その特許権は、発明の名称が「空調服の空気排出口調整装置、空調服の服本体及び空調服」というものです。空気を外に排出するための空気排出口の開口度を調整するための装置に関するもので、「空調服」全体の概念を基本とするものではありません。

最初の特許出願の重要性を、改めて思いました。

最初の特許出願が成功するか否かは、発明者ではなく、知的財産部門がカギを握っています。知的財産部門は、常時、発明の把握に注力し、「発明の価値」を評価する必要があります。

知財部長時代、「サテライト作戦」と称して、知財部門トップが重要発明を把握し、その後のアクション知財部員に指示すべきと提唱していたパワポスライドを、紹介します。下の図です。

これはいい発明だと判断したら、知財部員を動員します。徹底的に先行文献を調査し、複数の知財部員でクレームを考えます。その時点で出来うる限りの「将来を見据えたクレーム」。これが重要だと思います。

この考え方は間違っていなかったな、と改めて思いました。

(M.S.)