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AIには到達できない「Intelligence」 -『神は細部に宿る』-

AIが、われわれホワイトカラーの仕事を奪うと言われはじめました。そのとおりだと思います。「機械のように正確な仕事をしてきた人」には、AIはものすごい脅威です。
でも、Intelligenceを持っていれば、仕事を失うことはないと思います。知財調査におけるIntelligenceは、以下のようなものだと思っています。
2010年11月、JAPIO(日本特許情報機構)の「特許情報フェア」で基調講演をしました。
標題を『経営に資する知財情報』とし、副題に『InformationからIntelligenceへ』と書き加えました。言いたかったことは、これからの時代、知財情報を扱う調査マン・ウーマンは、Informationの収集に留まらず、Informationを加工してIntelligenceへ昇華させるべきだ、ということでした。Intelligenceを辞書で調べると、下のようになります。

「知能」そして「諜報」です。
特許情報を集め、それを解析してライバル会社の活動内容を明らかにする。情報を歴史として捉え、ライバルが歩んでいる方向を見定めて示す。それが経営に資する知財調査であると主張しました。
そして、それを実行しました。いまも継続してIntelligenceを追い求めています。
最近になって、ようやく『InformationからIntelligenceへ』が注目を集めるようになりました。日経新聞で7月に紹介された『IPランドスケープ』もそのひとつです。
でも、なかなか難しいこともあるようです。長い間やってきて、わかり始めてきたことですが、Intelligenceを追求する仕事は、誰にでもできるものではないようです。
だからこそ貴重なのだ
、と思います。ある種の『暗黙知』が必要かもしれません。
以前、Intelligence仕事の権化、手島龍一氏と佐藤優氏のIntelligenceについての考え方をまとめたことがありました。下記のとおりです。参考にしていただき、みなさん独自のIntelligenceを作ることをお薦めします。Intelligenceは、生きていく上で、とても強い武器になります。

Intelligenceは「Informationの海」から紡ぎだすもの(手嶋龍一)

そもそも「Intelligence」とは、一般に思われているような「極秘情報」とか「スパイ情報」とかいったものとは、いささかニュアンスが違い、欧米の識者の間ではもっと広い意味で使われています。膨大で雑多な「一般情報」つまり「Informationの海」から、ダイヤモンドの原石のような貴重な情報を選り抜き、分析し、問題の核心をIntelligenceとして紡ぎ出した情報。まさしく最後の一滴が「Intelligence」です。
国家の運命を委ねられた指導者が、和戦の岐路に立たされたとき、最後の決断を下す決定的な拠り所が「Intelligence」なのです。

Intelligenceの仕事は、「個人芸」「職人芸」(佐藤優)

Intelligenceの仕事は、組織ではなく、一個人の能力や手腕に頼る「個人芸」「職人芸」の世界になっています。テルアビブ郊外にある「カウンターテロリズム・センター」に行きましたが、なんとたったひとりの中年男性が運営しているのです。「反テロ研究」が三度の飯よりも好きで、カウンターテロリズム学を「歴史と哲学と宗教と軍事とIntelligenceをすべて総合した科目」だと自ら定義しているんですよ。それもあくまで「個人Intelligence」として単独で研究している。
その能力は非常に高く、モサドやアマン(イスラエル参謀本部諜報局)といった組織も彼の能力に大いに頼っているといいますから、間違いなく本物ですよ。では、彼がひとりでどうやって肝心の情報を入手しているのか。驚いたことに、情報源は「インターネット」。あとは「自然にいろいろ教えてくれる人が出てくる」のだそうです。秘密情報など何も持ってはいないのです。
ふたりが共通して述べていること。それは『神は細部に宿る』ということではないでしょうか。

(M.S.)