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ユニクロのセルフレジ - アスタリスクから「差し止め請求」 –

この前、冬物を買いに、ユニクロに行きました。そうしたら、レジがガラッと変わっていました。

ワタクシがよく行くユニクロは、「横浜みなとみらい店」ですが、大規模店なので、長いカウンターに10を超えるレジが並んでいました。それが完全になくなり、壁に向かって機械が並んでいました。店員さんは、セルフレジの入り口にいる一人だけ。お客を誘導する係だけでした。

たしかに、人件費は減ります。その分、お客が作業をすることになります。連れ合いがセルフレジを拒否したので、「サービスカウンター」と呼ばれるところに並び、いつものレジの要領で支払いを済ませました。

セルフレジは、下の写真のようなものでした。

  • 右側のボックスに購入するものを置きます。
  • タブレット端末のボタンを押すと、購入品が認識されます。ICチップが埋め込まれたRFタグが商品の値札についていて、そこに電波が当たり、自動読取りされます
  • クレジットカードもしくは現金で代金を払います。これで終了です。

 

知人から教えて貰い、ユニクロのセルフレジが特許侵害で訴えられているということを知りました。

ネットで調べてみると、アスタリスクという会社がファーストリテイリングを相手取って、東京地裁に提訴していました。自己が保有する特許第6469758号を侵害するというものでした。

特許第6469758号の特許請求範囲は、下記のとおりでした。

  • 物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、
  • 前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、
  • 前記アンテナを収容し、前記物品を囲み、該物品よりも広い開口が上向きに形成されたシールド部と、を備え、
  • 前記シールド部が上向きに開口した状態で、前記RFタグから情報を読み取ること
  • を特徴とする読取装置。

上記構成要件の「シールド部が上向きに開口した状態で、前記RFタグから情報を読み取ること」が最大のポイントです。従来技術では、商品を入れるところに蓋がついていました。蓋がないと、電波が漏れて、隣のレジのRFタグを読みとってしまうという不具合が生じるのです。

 

原理は、とてもシンプルでした。下の図で、60がアンテナで、ここから読み取り用の電波が出ます。

 

商品を入れる部分の内側には、電磁反射シート38と電磁吸収シート40が張られており、アンテナからの電波が外に漏れないようになっています。上側は空いているので電波が漏れますが、電波が届く範囲は、左図のハッチ部分で、隣のセルフレジへは電波が届きません。なので、隣のレジの商品の情報を読みとるという不具合は起きません。

本発明の最大の特徴は、「上向きに開口した状態で、RFタグから情報を読みとること」です。ユニクロのセルフレジも、「上向きに開口した状態で、RFタグから情報を読みとって」います

本願の審査履歴をみると、拒絶理由が1回出ており、1回の補正と意見書で特許査定になっています。2019年2月13日に特許公報が出されましたが、5月22日にファーストリテイリングから無効審判請求されています。3件の異議申し立てもなされていました。

どのような証拠が出されているか見てみたいですね。特許第6469758号は、ジャストアイデアのような特許(ワタクシの電気の知識でも理解できますし、発明者にもなれそうです)ですが、特許無効にするには、証拠が重要。シンプルすぎて、証拠を示すのが、なかなか難しいように思います。また、最近の裁判状況もプロパテントになっていますので、本発明そのものを示すような証拠でなければ無効は難しくなります。

和解になって、無効審判が取り下げられ、うやむやにならないことを祈ります。結論を見てみたいので。

 

(M.S.)