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古い脳のすばらしさ – 「扁桃核」の働き –

前頭葉はブレーキ役

人類は「前頭葉」がとても発達しており、それが他の動物と大きく違うところであると言われています。「前頭葉」が発達している人は、学業の成績もよく、すぐれた人間であるとも、よく言われます。
「前頭葉」は、人間にとって、たしかに重要な働きをしていると思いますが、いろんな本を読んでいくと、それがすべてではないと思うようになりました。
そんなとき、「チコちゃんに叱られる」で、「なんで、おやじは『おやじギャク』を言うのか」ということを取り上げていました。なぜなのかは、以下のとおりです。

「前頭葉は20代で発達のピークを迎え、50代を境にガクッとその働きが弱くなる」
「30代の男性では、おやじギャクが浮かんだとしても、前頭葉の働きが活発なので、『くだらないと思われたくない』『恥をかきたくない』という理性が働いてブレーキがかかる」
「ところが加齢とともに、前頭葉の機能が低下していくため、ブレーキが利かなくなり、おやじギャクを連発するようになる」

「前頭葉」はブレーキをかける役目を果たしているというのが結論でした。ここで思ったのは、「前頭葉」はブレーキをかける役目だけで、もともとのアクションを生み出すことに関して、積極的な役目を果たしていないのではないかと思いました。

前頭葉を教育する「扁桃核」

中野信子さんの著書「サイコパス」(文春文庫)には、サイコパスの脳は「良心というブレーキが利かない脳」と書かれてあります。とんでもない犯罪を平然と遂行したり、ウソがバレても、むしろ自分の方が被害者のようにふるまうサイコパスの「前頭葉」は、良心という概念が欠如していると書かれてあります。

なぜ「良心というブレーキが利かない脳」になったのか。その原因を、「サイコパスは扁桃核の働きが低い」と説明しています。扁桃核は、右の図の赤い部分で、とても小さな部分です。

Wikipediaより

扁桃核は人間の快・不快や恐怖といった基本的な情動(感情)を決める場所です。人間の快・不快や恐怖などの情報を前頭葉に送り、前頭葉は、その情報をもとに、善悪や正邪の基準、規範を学んでいきます。扁桃核の働きが低いと、情動を伴った情報が前頭葉に伝わりにくくなり、「道徳」も「熱い共感」が形成されず、「冷たい脳」になってしまうといいます。

「扁桃核」の働きぶり

櫻井武さんの著書「「こころ」は いかにして 生まれるのか」(BLUE BACS)には、「こころの動き」は大脳辺縁系で作られると書かれてあります。「大脳辺縁系」の主要な構成部位に「海馬」と「扁桃核」があります。そして、情動(感情)に深く関わっているのが、「扁桃核」だと述べています。つまり、「こころ」は、「扁桃核」から生まれているのです。
「扁桃核」は、もっとも進化した大脳皮質よりも進化的に古いもので、高級脊椎動物であれば、「扁桃核」を持っています。
「扁桃核」が作り出す情動(感情)は、動物の生存確率を高めるのだそうです。恐怖や不安がなければそれに対処することができず、すぐに淘汰されてしまいます。サルがヘビを怖がるのは、扁桃核が「ヘビは危険」と判断しているからです。また、喜びがなければ報酬を確保することができません。動物がエサを確保するために頑張るのは、扁桃核が「喜びが得られる」と認識しているからです。
人の好き嫌いも、「扁桃核」が決めます。「あの娘が好きだ」「あいつは嫌いだ」も「扁桃核」によって決められます。だから、好き嫌いは理屈では説明できないのです(生きるために必要なことなのでしょうね)。
「扁桃核」は、記憶にも関与しています。感動すると扁桃核が刺激され、海馬が「これは重要な情報である」として長期記憶の倉庫に送るようになります。長期記憶はいつまでも忘れません。
前頭葉よりも古い脳である「扁桃核」の果たす役割。AIにはできないことですよね。

(M.S.)