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ユニクロ・セルフレジ事件 - 無効審判の審決が出ました –

昨年12月に紹介した「ユニクロのセルフレジ事件」。8月6日に特許庁の審決がでました。アスタリスク特許(第6469758号)は、請求項1,2および4が無効、請求項3は、特許維持ということになりました。

特許維持となった請求項3は、なぜ生き残ったのか、また回避は可能かを、考えてみましょう。

アスタリスク特許

まずは、アルタリスクの特許についてご紹介します。

下の図が、特許明細書に記載されている【図1】です。商品Pを入れたままの買い物箱Bを、そのまま、読み取り装置20の開口部に入れるだけで、商品PについているRFタグ12の情報を読みとることが出来るというのが、本発明の作用効果です。

 

蓋をしなくても、読み取りのための電波が漏れて、となりのセルフレジの商品のRFタグ情報を拾ったりしないというのが最大の特徴です。

請求項1は、訂正後、以下のようになりました。

・物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、

・前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、

上向きに開口した筐体内に設けられ、前期アンテナを収容し、前記物品を囲み、該物品よりも広い開口が上向きに形成されたシールド部と、

・前記筐体および前記シールド部が上向きに開口した状態で、前期RFタグから情報を読み取ることを特徴とする読取装置。

甲第1号証

特許無効を主張したファーストリテイリングが準備した「最も強い特許無効の証拠」(甲第1号証)は、アメリカの特許公報(第9245162号)でした。下の図が発明のポイントを示しています。

商品Pを、上向きに開口した部分106に入れます。106の部分は、下のFIG.2のような構造になっており、204,206,208,210の金属製側壁があり、そこに備えられたアンテナで、RFタグの情報を読み取ります。

甲第1号証によれば、アスタリスク特許のポイント「筐体および前記シールド部が上向きに開口した状態で、前期RFタグから情報を読み取ることが可能になります。

この甲第1号証によって、請求項1は、特許無効になりました。

請求項2と4も、特許無効になりました。

ところが、請求項3は、生き残りました。請求項3は、下記のとおりです。

【請求項3】前記シールド部は、

前記電波を吸収する電波吸収層と

前記電波吸収層の外側に形成され、前記電波を反射させる電波反射層と、

を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の読取装置。

請求項3

下の図は、本発明の読取装置の断面を示したものです。

 

28が、図1の壁板です。壁板28の内部がシールド部となっています。

壁板28のすぐ内側に、電波反射シート(電波反射層)38が設けられます。さらにその内側に電波吸収シート(電波吸収層)40が設けられます。

電波吸収シート(電波吸収層)40の更に内側に、アンテナ60が設置されます。アンテナ60は電波を発生させ、RFタグの情報を読み取ります。

上記の構成にすることによって、「交信領域」が、図のハッチング領域になり、蓋をしなくても、隣のセルフレジに電波が飛ばないようになります。また、漏れた電波は弱いものになります。

右側の拡大図に示されるとおり、シールド部の内側から、電波吸収シート(電波吸収層)40、電波反射シート(電波反射層)38を、この順に設けるのが、請求項3のポイントになります。

一方で、甲第1号証のシールド部(前ページのFIG.2)では、ボックスの内側に設けられた「垂直側壁204,206,208,210」が、金属製になっています。そして、「垂直側壁204,206,208,210」は「アンテナ」を備えている」と記載されています。「垂直側壁204,206,208,210」は「電波反射シート」であり、「アンテナ」ではありますが、「電波吸収シート」を備えていません

「垂直側壁204,206,208,210」が「アンテナ」を備えているために、「垂直側壁204,206,208,210」の内側に「電波吸収シート」を貼ると、読み取りのための電波が弱くなり、不都合なことになります。

このことを、審決では、『阻害要因が存在する』と述べています。そして、『本件発明3(請求項3)の構成は、甲1号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない』と結論付けています。

「電波吸収シート」が無いので、甲第1号証の装置では、シールドボックスから漏れる電波は、かなり強いものになのでしょう。その強い「漏れ電波」が、となりのレジのRFタグに及ばないように、甲第1号証では、シールドボックスの上方に「防壁108,110,112」を設置しています。「防壁108,110,112」には、電波吸収材が使用されています。

回避は可能か?

請求項3を回避するためには、電波反射シート(電波反射層)38を無くするか、電波吸収シート(電波吸収層)40を無くするか、積層の順番を変えるか、を行うことが必要です。

積層の順番を変え、電波吸収シート(電波吸収層)40の内側に、電波反射シート(電波反射層)38を設けることが、なんの意味もないことは、素人のワタクシにも想像がつきます。

電波吸収シート(電波吸収層)40を無くするのは、可能でしょうか。甲第1号証と同じになるので、漏れ出る電波が強くなり、それを閉じ込めるための「防壁」が必要になりそうです。

電波反射シート(電波反射層)38を無くするのは、どうでしょうか。シールドボックスから横に電波が漏れることにならないでしょうか。電波吸収シートを2倍以上厚くすれば防ぐことができるのでしょうか。

なんとなく、電波反射シート(電波反射層)38を無くするのが、一番回避の可能性が高そうですが、素人のワタクシには、よくわかりません。読者諸兄で電磁波に詳しい方は、回避可能かどうか、ぜひ、ご教授ください。よろしく、お願いします

アスタリスク社によれば、ユニクロのセルフレジは、請求項3の範囲内にあるようです。このままでは、現在ユニクロに設置されているセルフレジは、改造の必要がありそうです。

さて、次は知財高裁。どういう判断になるのでしょうか。請求項3は、意外と強そうです。

(M.S.)