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第427回 ATIS例会報告

10月21日(水)、日鉄総研本社 国際ビルよりリモート会議にて、43社・85名(リアル9名、リモート76名)の出席により第427回 ATIS例会を開催しました.当日行われた議事の中から、 (1)(株)アイ・ピー・イー 山梨 雅博氏によるシンポジウム、(2)東京理科大学大学院 教授 淺見 節子氏による講演「特許行政の動向と特許異議申立制度の運用状況」についてご紹介いたします。

シンポジウムでは、ATIS会員企業である(株)アイ・ピー・イーから、親会社である味の素(株)のプロフィールと知財戦略、(株)アイ・ピー・イーの概要、現状や取り組みについて紹介がありました。
味の素グループにおける「知的財産に関するグループポリシー」、グローバルな特許・商標ポートフォリオ、事業セグメント別特許保有件数、知的財産部門の機能・組織及び知財海外拠点について紹介されるとともに、知的財産部門の活動として、グローバル知的財産戦略を策定・推進、知財創造・ブランドマネジメント、侵害模倣品排除、リスク管理等を行っているこが紹介されました。
(株)アイ・ピー・イーについては、設立目的・ミッションが紹介され、事業としては、知財管理、特許調査等であり、調査業務は味の素(株)知的財産部との2元体制であることや事業スキームについて説明されました。併せて、ペーパレス,RPAによる業務効率化活動や新しい働き方について課題とメリットが紹介されました。

東京理科大学大学院 教授 淺見 節子氏からは「特許行政の動向と特許異議申立制度の運用状況」と題し、大変興味深く有意義な講演を頂きました。
世界の特許出願状況については、中国における出願件数がトップであるものの、2019年には出願が140万件に減少し増加傾向に変化があったこととその背景等が解説されました。PCTについては、2019年に中国が米国を抜き出願件数でトップになったものの移行国数では中国の出願人の移行国数が少ないことや、デジタル通信分野の出願件数の伸びが大きいこと等が解説されました。
日本の審査・審判の状況については、日本の特許査定率の上昇は、出願の厳選や、権利化意欲の向上、動機付けが不十分だと進歩性を否定しづらい背景があることなど、いろいろな原因があること、産業界からは審査が甘くなっていると指摘されているが、何をもって甘いというのか、その原因は複合的であることに言及がありました。また、侵害訴訟における無効の抗弁や、異議申立制度の復活の影響により無効審判が減少しており、更には請求不成立率が高くなっており、このことも無効審判の減少要因と推察されるとのことでした。
特許異議申立制度の運用については、現行制度改正の背景と経緯が解説され、無効審判との比較と件数推移が説明されました。旧異議申立制度は年間3000件程でしたが、新異議申立は年1000件程度であり、化学分野等の利用が多いとのことでした。
更に、特許異議申立の審理結果・異議理由の分析結果を説明され、特許権者への示唆として、異議申立されても取消理由が通知されなかったものが多く存在すること、訂正無しで意見書のみによる反論が有効な場合があること、2度の訂正機会により適切にクレームを減縮させることができる等を挙げられました。一方、異議申立人への示唆として、取消は少ないが訂正あり維持が多いのでクレームを減縮させるには有効な制度であること、拒絶理由通知などで使用された文献が、異議申立てにおいても使用される場合があること、訂正後に意見書提出の機会があるため、減縮方向を予測して追加文献を準備することがよい等が挙げられました。