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第442回例会報告

442回例会報告

 

216()、日鉄総研本社 国際ビルよりリモート会議にて、42社・116(リアル9名、リモート107)の出席により第442 ATIS例会を開催しました。当日行われた議事の中から、AI調査分科会、特許翻訳分科会、新興国の知財調査分科会の中間報告とパナソニック株式会社 名誉技監の大嶋 光昭様の講演について紹介いたします。

AI調査分科会からは2回の勉強会で株式会社Amplified ai CEOCOOのそれぞれの方から講演頂いて意見交換を実施したことについて報告頂きました。質疑では分科会のメンバーにAIの技術面に興味がある方と実務的な活用方法に興味がある方がおられることについての議論があり、その点を今後の運営へ生かしていく旨の説明がされました。

特許翻訳分科会からは機械翻訳とポストエディットの現状認識と課題解決のアクションについてと、機械翻訳トライアルのノウハウと進め方についての議論を実施したことについて報告されました。また、質疑においては今後の活動でポストエディットが議論の中心となる可能性について説明がされました。

新興国の知財調査分科会からはタイのパテントクリアランス調査に関してデータベースにおける収録データの詳細確認、パテントクリアランス調査のシナリオ化、シナリオパターンの充実化を実施したことが報告されました。質疑では、現地に行くことの重要性とともにオンライン活用や新興国に強い国内企業にヒアリングを行うことなどのアドバイスが会員から提示されました。

 

講演会では「「両利きの経営」に学ぶ、成熟企業におけるイノベーションのおこし方 ~実際のイノベーションの成功事例を用いて成功要因を解説する~」と題して日本を代表するシリアル・イノベーターである大嶋様にご講演いただきました。

冒頭で日本はGDPも平均賃金も低迷しており、米国のGAFAのような破壊型イノベーションが早急に日本で生じないと日本が滅びると現状の危険性を提示されました。

この破壊型イノベーションには独創性が必要で、その実現にはイノベーター人材が必要です。しかし、イノベーターは異端者なので通常の環境下だと排除されやすい点を指摘され、そのためイノベーターを“隔離”するイノベーション組織を設けることが必要と提言されました。

このイノベーション組織では、予算を独立させること、稟議を簡素化すること、外部からの口出しをさせないこと、メンターとしてのイノベーターを入れること、現状の人事制度では難しいがイノベーションを起こせる特定の人に給料を増やすことが満たされる必要があるとのことでした。

また、ファンドの発達によりベンチャー企業でイノベーションが起きる米国に対して日本では成熟企業内でのイノベーションが適しているとの説明がありました。それは成熟企業では法務部門や知財部門が充実しており連合艦隊のような重厚な知財ポートフォリオの構築に適しているとともにコンプライアンスが高く継続性があること、さらに成熟企業に存在する不採算部門にある工場や人材などの経営資源をイノベーターが活用できるからということでした。

イノベーション組織の実例としてかつてパナソニック社内にあり大嶋様が属されていた無線研究所について紹介されました。無線研究所は創業者が作った組織で独自に予算を持っており、多くのイノベーターが在籍して独創的な研究を行うイノベーターのマインドが伝承されていました。また、そこには開発した技術を持ち工場に異動する「兵役制度」があり技術の出口が見えるような教育体制があったとのことでした。無線研究所におけるイノベーション事例では、手振れ補正のジャイロセンサや光ディスクの著作権保護の事例が説明されました。

シリアル・イノベーターとしてのイノベーター個人へのアドバイスとしては、発想力、着想力、資金調達力が重要であることや将来を先取りするノウハウとして第3波予想、3階建て理論、他階層間移動分析の考え方が紹介されました。

講演で示された上記ご提言は、ATIS会員にとって貴重なアドバイスとなりました。