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第467回例会報告

2024年515日(水)、NEC芝倶楽部201号室にて第467ATIS例会を開催しました。今回はリアルとリモートのハイブリッド形式で行われ、145名が参加しました。当日行われた議事の中から、住友電工知財テクノセンター株式会社様によるシンポジウム講演について、また「生成系AIの知財業務に及ぼすインパクトと展望」をテーマにしたパネル討論についてご紹介します。

 

(1)シンポジウム講演

 

住友電工知財テクノセンター株式会社代表取締役社長 佐野裕昭様より、住友電工グループの知的財産戦略と課題、将来像をご紹介いただきました。特に、事業環境変化に対応するための知財戦略の重要性や、具体的な事例を交えた説明があり、参加者から高い関心を集めました。

住友電工知財テクノセンター株式会社代表取締役社長 佐野裕昭様

住友電工テクノセンター様は、1997年に本体のコーポレート部門から分社化されています。分社化された理由は、知財費用を各部門で管理するといったコスト管理を明確化し、コスト意識を高めることが目的とのことです。これまでの知財戦略において、事業環境変化に対する対応が遅れることで新興国などの後発参入者への参入障壁を作ることができず、苦戦を強いられるケースがありました。課題に対して、知財活動と事業戦略の両軸で考えることの重要性をご説明いただきました。特に、変化の激しい外部環境においては、技術面・社会面・事業貢献などにおいて、知財戦略を適宜更新することが重要であるとのことです。

 

(2)パネル討論

 

ファシリテーターの株式会社イーパテント 野崎篤志様が進行を務め、以下のパネリストが登壇しました

  • パテント・インテグレーション株式会社 大瀬佳之様
  • Axelidea株式会社 西田泰士様
  • Ai 株式会社 平井智之様

パネルディスカッションでは、生成系AIが知財業務に与える影響について活発な討論が行われました。

2022年11月にChatGPT-3.5が登場して以来、生成AIの技術的な進歩は驚異的であり、その活用が広がっています。生成AIは知財業務において、発明、検索・調査・分析、出願・権利化、知財管理・活用などの用途にマッピングされています。本討論では、アイデア・発明創出支援(AXELIDEA Patent)や読解支援(サマリア)、特許明細書等の自動生成(プライベート特許検索)など、各分野でサービス提供を行う3名の登壇者を交えて、具体的な事例が紹介されました。

 

まずポジショントークとして、パネリストの大瀬様からは、生成AIの概要と知財実務への活用について説明がありました。AI読解支援サービス「サマリア」の紹介があり、特許明細書の要約や分類付与の具体例が示されました。

西田様からは、アイデア創出のAIAXELIDEA Patent」の紹介がありました。独自のLLM(大規模言語モデル)を開発し、豊富なアイデアを生み出すAIの特徴について詳しく説明されました。特に、AIが人間の思考バイアスを超えた新しい解決策を提供する能力について強調されました。

さらに、平井様からは、AIを活用した特許文案の生成、検索、分析について紹介がありました。独自のビッグデータ処理技術による新しい特許検索サービスが、どのような業務ユースケースを解決するのか示されました。

パネルディスカッションでは、生成AIを用いた新規性・進歩性の評価について議論され、現時点では限界があるが、将来的には有効なツールになる可能性が高いとの見解が示されました。AIの信頼性と品質については、現時点で完璧なものを期待するのではなく、人間の知識やスキルを補完するツールとして使うべきだという意見が共有されました。AIによる特許文書作成や検索の効率化については、既に多くのツールが実用化されており、今後さらに進化が期待されることが強調されました。

 

最後に、「生成AIの利用においては、完璧性を求めないこと。不完全であることを前提に、自分自身の知識やスキルの不足を補うために使うことが望ましい」とまとめました。他のパネリストも生成AIの活用が知財業務において重要なツールとなることを強調し、今後の展望についても前向きな見解を示しました。

 

例会後、同じNEC芝倶楽部2階の会場で懇親会が開催されました。会場参加者が立食パーティ形式で集まり、非常に盛り上がった会となりました。初参加の方々のスピーチや講演者の皆様、ATISメンバーとの交流を通じて、多くの貴重なお話を伺うことができました。緊張感のある例会から一転、懇親会では飲食を共にしながらカジュアルな意見交換が行われ、ATIS参加の大きな価値の一つとなっています。

 

以上