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第463回例会報告

2024年118日(木)に、東京都立産業貿易センター浜松町館にて第463ATIS例会を開催しました。リアルとリモートを併用した会議で120名(リアル45名、リモート75名)が出席しました。

当日行われた議事の中から、賛助会員である一般財団法人工業所有権協力センターと株式会社ジー・サーチによるサービスの紹介、キヤノン株式会社 顧問 長澤 健一 様のご講演について紹介いたします。

(1) 一般財団法人工業所有権協力センター

一般財団法人工業所有権協力センター(IPCC)は、1985年に設立され、国内の登録調査機関の中でシェア6割程度を持つ国内最大の登録調査機関です。今回はIPCCが提供する先行技術調査(特許庁向けと一般法人向け)、特許庁向けの分類系事業、そして公益目的事業(特許検索競技大会)の3つについてご紹介をいただきました。

特許庁向けの先行技術調査が主要な業務であり、国内の文献検索をはじめ外国文献検索や特定の技術分野のサーチ対応など、多岐にわたる調査を実施されています。また、特許庁向けには分類系事業として年間約29万件にも及ぶ公開前の出願情報にFIFタームの付与を行うなど、高度な専門知識を活かした業務も展開されています。

2015年からは民間法人向けにもサービスを提供されており、特定登録調査に加えて出願前調査や無効化資料調査なども実施されています。特定登録調査を受けることで、特許庁の制度により審査請求料が約2割軽減されるメリットがあるとのことです。

IPCCは公益目的事業として特許検索競技大会を主催されており、初心者向けのスチューデントコースとプロ向けのアドバンストコースの二種を開催されています。スチューデントコースは通年でサテライト開催も行っており、企業や大学が研修・授業に利用することも可能とのことです。

(2) 株式会社ジー・サーチ

株式会社ジー・サーチは、富士通株式会社のグループ企業であり、データベースサービスだけでなく、デジタルソリューション事業を含む二軸で幅広いサービスを提供されています。今回はジー・サーチ社が提供するサービスであるJDream Innovation Assistについてご紹介をいただきました。

JDream Innovation Assistは、論文、特許、ニュースの3つの情報源から技術情報と総合情報を瞬時に可視化するツールです。このツールは技術戦略の策定や研究開発をサポートし、情報収集の効率を向上する機能を備えています。

今年1月に行った機能強化では、海外特許情報と共同通信PRワイヤーのプレスリリース記事が追加されました。また、論文と新聞記事にIPCInternational Patent Classification)を機械的に付与しており、特許と共通の軸で各情報を検索することが可能です。これにより、より網羅的で効果的な情報収集が実現されました。

さらに、日刊工業新聞の特集記事から選択した25のテーマの説明文を、概念検索のキーとして利用することができます。これにより、特定のテーマに関する情報を的確に抽出し、戦略的な意思決定をサポートできるとのことです。

最後に、オンラインデモによりJDream Innovation Assistサービスの機能と特徴が分かりやすく説明されました。

(3) キヤノン株式会社 顧問 長澤 健一 様のご講演

「長期企業経営と知財戦略」と題してご講演をいただきました。

まず知財担当者としてキャリアを積まれたキヤノン株式会社でのご経験の紹介の後、ご担当された知財関連の組織と経済安全保障の組織についてのご説明がありました。グローバル知財管理ではエンジニアの近くに知財担当者を置くこと、外部との交渉はグループ各社が個別で行うのではなく本社が窓口となることで交渉に柔軟性を持たせることができるとのお話がありました。

続いて2000年代以降のグローバリズムの進展、ナショナリズムの増加、そしてコロナ禍が世界に与えた影響に焦点を当てられました。特に、コロナ禍による地政学的な変化や環境問題、人権問題について触れ、これらが知財戦略に影響を与えていると強調されました。

また、コアコンピタンスに基づく知財戦略の重要性や、グローバリズム、PAEPatent Assertion Entities)、ナショナリズムの動向に合わせた知財政策の変遷について説明されました。さらに技術の潮流やSEP(標準必須特許)の重要性、IoT/AIの進展に伴う知財の新たな課題にも触れられました。

知財人材の育成についてのお話では、知財戦略の成否が人財で決まるとし、社内外の横のつながりが重要であると強調されました。研究開発において知財が果たす役割にも触れられ、社内外の様々な知見との連携が重要であることが強調されました。

最後に、将来の技術保護において知財権、データ、営業秘密が不可欠であることは変わらないとする一方で、クラウド、メタバース、NFTの進展に伴う新たな法的課題についても言及されました。また、小規模なコミュニティへの参加やATISのコミュニティとしての重要性、知財系の子会社や関係会社が果たすべき役割についてもお話がありました。