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第465回例会報告

2024年321()、金沢工業大学 大学院 虎ノ門キャンパスおよびリモート会議にて、45社・115(リアル46名、リモート69)の出席により、臨時総会と第465ATIS例会を開催しました。当日行われた議事の中から、賛助会員である一般財団法人日本特許情報機構様と株式会社RWSグループ様によるサービスについて、また特許庁総務部企画調整課 津幡 貴生様のご講演についてご紹介致します。

一般財団法人日本特許情報機構(Japio)様より、世界の特許情報を日本語で横断的に検索・表示できるサービスである、「Japio世界特許情報全文検索サービス(GPG/FX)」の特異機能をご紹介頂きました。

特異機能は、符号表示機能とSDG’sスコア表示機能の2つです。符号表示機能は、海外特許公報に各国の原語で記載されている図面に日本語名称(符号名称)が表示さる機能です。また、SDG’sスコア表示機能は、日本の公開公報を対象として、どのSDG’s目標値(技術に関連のある8つの目標を対象)に該当するのかをAI推定値で確認できる機能とのことです。

 

次に、株式会社RWSグループ様より、クラウドサーチサービスをご紹介頂きました。

クラウドサーチサービスの特長は3つ、サーチャー人数、母国語での調査、リワード方式による報酬です。39,000人超のサーチャーによるあらゆる技術分野を網羅しています。エキスパートサーチャーは一定以上の成績を収めた全体の1%のみである。調査専門家チームのスタディマネージャーがサーチャーとの橋渡しを行っています。AOPコネクト(お客様専用のセキュアなプラットフォーム)を設定して、半永久的に過去~現在までの調査結果の確認が可能になっています。

 

特許庁の津幡様より、「イノベーション創出のための知財エコシステムの構築に向けて(特許庁の取り組み)」についてご講演を頂きました。

日本のイノベーション創出の現状と課題として、「失われた30年」で世界に対し席巻するイノベーションが停滞し、日本企業の競争力が遅れをとっています。企業価値に対する無形資産の重要性が高まる中、知財をはじめとした無形資産を戦略的に経営に活かして行くことで、企業のイノベーションと「稼ぐ力」の強化に繋げる段階にあります。VUCAの時代において、多様な「知」を結集して、魅力的な価値を創造するイノベーションを創出し知財エコシステムを強化することが、特許庁の責務であるとのことです。

更に、気候変動問題の深刻化、技術の複雑化・融合化とAI技術の急速な発展、多様性の促進等の様々な課題が、新たなイノベーションを創出する原動力となり得る状況です。また、経済安全保障の観点が加わっています。そのため、多様な主体による知財エコシステムの協創を通じたイノベーションの創出を目指すことが目的であることです。この知財エコシステムの構築に向けて、企業価値に占める無形資産の割合は日本市場では3割程度と低い(米国市場は9割程度)のが現状です。また、企業価値向上において無形資産の活用が日本企業の伸び代です。コーポレートガバナンス・コードのコンプライ率も68割程度であり、知財投資の開示・監督については手探り・様子見状態です。

令和5年度の調査結果として、「本質的な強みの掘り下げ」が重要であり、知財部門は他部門と伴走することで各部門の課題解決を支援する役割を担うことが大切です。IPランドスケープ実践に向けて目的別の分析手法や仮想実施事例等を掲載したガイドブックを作成しています。令和6年度方針(予定)として、自社の強みを把握し、適切な開示によって企業価値向上を図ることが基金の課題です。そのため、ステークホルダーとの建設的な対話に資する知財経営の開示の在り方を議論することを支援しています。

グリーン・トランスフォーメーション(GX)関連技術を俯瞰できるようにした技術区分表(GXTI)と、技術動向を把握するための検索式を併せて公表しました。GXTIの活用により、GX関連技術の強みや弱みが把握でき、自社の研究開発力の優位性を特許情報に基づいてエビデンスドベースで説明できます。

知財経営支援を通じて、地域経済の好循環を実現するため、中小企業・スタートアップ等の稼ぐ力を磨き上げる段階にあります。そのため、福島県や石川県と「知的財産の保護及び活用に関する連携協定」を締結した。更に、知財を活用して社会課題解決を図るI-OPENプロジェクトを実施しています。このプロジェクトで生まれた社会価値を共創するツールとして、知財の活用事例を2025大阪・関西万博でも情報発信します。

イノベーション創出のため、異なる属性を有する人材の多様性を活かし、多様な人材を組織内に包摂する取組みが同時に行われることを目指しています。イノベーションに対するダイバーシティの意義として、多様性のあるチームで取り組むことによるニースや視点の幅が広がると考えています。

国際連携として、日本企業が海外でも知的財産権を円滑かつ予見性高く取得し活用し易い環境を構築することを支援しています。特に、日米欧中韓の五庁間での制度・運用の調和が重要です。その中で、新興国や途上国の知財エコシステムの整備が課題となっています。直近では、世界知的所有権機関(WIPO)と協力し、WIPOグリーンの取組(環境技術マッチング)の支援を強化しています。

AI技術の進展も踏まえ、幅広い分野の施策を検討しています。特に、創作過程におけるAI活用の拡大が見込まれることも踏まえて、AI関連発明の特許審査事例を拡充し、公表します。また、AI関連発明の効率的かつ高品質の審査を実現するためのAI調査支援チームを強化します。特許審査のプロセスの、「分類付与」・「先行技術調査」においてAI技術を試行的に導入し、審査官からのフィードバックを通じて精度向上を図っています。

最後に、今後国家及び国民の安全を損なう事態を生ずる恐れが大きい発明が記載されている特許出願については、経済安全保障にかかわる特定技術分野の特許出願として非公開制度が運用されます。運用開始は令和651日を予定しています。

 

例会終了後は、懇親会を開催しました。会員同士の活発な情報交換・懇親が図られ、盛会のうち閉会となりました。

 

以上