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第466回例会報告

2024年417()、株式会社IHI(以下「IHI」という)の本社にて第466ATIS例会を開催しました。リアルのみの会議で46名が参加しました。当日行われた議事の中から、i-muse施設見学と、キヤノン技術情報サービス株式会社によるシンポジウム講演について紹介します。

(1) i-muse施設見学

2018年にリニューアルオープンしたi-museIHI HISTORY MUSEUM)の施設見学を行いました。3チームに分かれてIHIの歴史と技術を展示品を見ながらご説明頂きました。

IHIの歴史は江戸時代までさかのぼり、1853年のペリー黒船来航をきっかけに石川島造船所として現在の東京都中央区佃に創業しました。以降、造船で培った技術をもとに資源・エネルギー、社会インフラ、産業システム、航空宇宙関連と、様々な分野で事業展開をしてきました。また創業期より初代会長として渋沢栄一先生が経営にたずさわりました。

i-museは6つのコーナーから構成されており、①当時は珍しかったクレーンを利用しての東京駅の鉄骨組み立て、②原油を運び日本の高度成長を支えた世界初の20万トン級タンカーである「出光丸」、③マイナス162℃の液化天然ガスを蓄えるLNGタンクの製造や超低温に対する技術の取り組み、④世界最長の吊橋である明石海峡大橋の建設、⑤多国との国際共同開発で生まれたV2500ターボエンジン開発、⑥IHIの代表的なロケットであるイプシロンロケットやロケットエンジンの心臓ともいえる液体水素ターブポンプ、日本の宇宙開発の原点といえるペンシルロケット(複製)の展示がありました。

また別会場ではIHIの歴史をプレゼン頂いたり、様々な技術に関する動画を視聴しました。一例として、八ッ場ダムの建設では、日本で初めてゲート設備開発をIHI1社で担当し、1年以上も工期を短縮したそうです。また、ルーマニアで最長の吊橋であるブライラ橋の建設では、最寄りの橋まで100㎞あったところを大幅に短縮したことで移動が楽になり、物流や人々の生活を支え、ルーマニアの経済発展に貢献しています。その他、豊洲の移り変わりもご説明いただき大変興味深いものでした。

IHIは長い歴史を持ち、様々な分野で「日本初」「世界初」の技術を開発し続け、社会貢献しており、大変有意義な時間となりました。

※ 特別な許可を得て撮影しています

(2) シンポジウム講演

キヤノン技術情報サービス株式会社の池田様からシンポジウム講演がありました。まずキヤノン株式会社全体の会社概要について紹介があり、現在は1996年にスタートした中長期経営計画のフェーズⅥを迎えているとご説明がありました。世界各地域の売上高の紹介と共に「生産性向上と新規事業によるポートフォリオの転換を促進する」をテーマに2025年に45000億円以上を目指しながら、世界で親しまれ、尊敬されるエクセレントカンパニーになる意気込みを語られていました。

主な事業としては以下の4つのビジネスユニットに分かれています。

  • プリンティング事業
  • イメージング事業
  • メディカル事業
  • インダストリアル事業

次にキヤノン株式会社の知財の特徴として「知財マインド」「特許ポートフォリオ」「戦う知財」についてご説明がありました。知財マインドは経営会議に参加する知財役員がいるため、経営層との対話及び意思疎通が良好な点、知財投資についても活発に行えるなどの紹介がありました。また特許ポートフォリオに関しては現時点で80,000件を超えており、強力な特許ポートフォリオが構築できているとお話がありました。戦う知財についてはCEO直下の組織体制として標準化への取り組み、パテントトロールとの争いを通じて対外的にも適切な権利行使を行う会社と認知が進んでいるとのことでした。

次にキヤノン技術情報サービス株式会社の成り立ちについて紹介がありました。キヤノンの特許調査部隊が独立した会社であることが特徴であり、2023年から新しく加わった知財業務管理をはじめ、現在では様々な部門が移管されて業務を推進しているとのことでした。会社設立の目的は特許調査の強化で、調査の専門家集団としてキヤノンの業務を支えています。また開発などを長年行う技術者にスキルを習得してもらい技術もわかる特許調査を強みにされています。

調査内容は外国出願前の調査が多く、先行技術調査が64%ほどを占めているとのことです。その他にも無効資料調査や侵害予防調査などを取り扱っているとのご説明がありました。

トピックスとして、調査の品質保証システムについて最近の取り組みと課題をご紹介いただきました。技術分野毎のグループに分けて課長とリーダー(審査者)を置いた階層的な構造でマネジメントを行っており、以下のような課題と対応策が挙げられていました。

● 調査基準書の作成:

リーダーや調査員の経験、性格に応じて調査にブレを生じるため調査の品質保証の観点で基準が必要。調査基準書を作成し、それが守られていることを、リーダーがチェックしているとのことでした。また常にフィードバックや見直しも行っており、調査基準書に載せ難いテクニックやノウハウに関してはガイドラインを作成されています。

● 調査品質の安定:

調査の品質を担保するために、グループを横断した横串である品質管理者会議で抜き取りの品質確認を行っている。また、前述の調査基準書に即した評価(=数値化)を実施し、この数値での管理によって品質の安定を目指しているとご説明がありました。

最後の質疑応答の時間では、外国出願前調査が多いとパリ優先などのタイトなスケジュールにどうやって対応しているのか、50代を過ぎた技術者がリーダーの役割を担えるのかなど多くの質問が寄せられ、同社のリーダーを置いての特許調査体制の運用の仕方に参加各社も非常に関心が高いことがわかりました。

以上